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砥石(トイシ)


砥石 <刃物をとぐ石。密度により、荒砥・中砥・仕上砥などがある>
 
 砥石は大工に限らず、およそ刃物を使う職人にとっては無くてはならないものです。
板前の包丁、床屋のカミソリなど、研ぎの技術がそれぞれの腕前を支えていると言ってもよいでしょう。
普通の刃物であれは、研いでやればまた使えるようになります。
かつてはどこの家にも、生活の中に砥石がありました。
砥石は砥石だけがころりと転がっていても、そんなものは使えません。
それだけでは刃物を研げるものとはなりません。
砥石が生きるかどうかの決め手は、先ず台にあると言って良いでしょう。
 
カンナを研ぐときは、右足で砥台を踏む
ノミを研ぐときは、左足で砥台を踏む
 台の作り方にも色々なものがあります。
右の図を見て下さい。
人造砥石の場合には、使う前に水に濡らす必要があるので、砥石が外れたほうが良いでしょう。
そこで、Aの部分を砥石より1ミリ程度短く掘って、砥台をしなわせて砥石を嵌めこみます。
これで取り外しが簡単で、しっかり固定できます。
研ぐときには、下図のようにBの部分を、足で踏んで力を入れます。

 砥石の中でも、天然の仕上砥は水を嫌います。
砥ぎ面での砥ぎに使った水分はすぐに蒸発してしまいますが、横から砥石に入つた水分は砥石のなかに残ります。
寒い冬には、凍結によって割れをも起こしてしまいます。
これを防ぐために、天然仕上砥の砥面以外は、ウルシやカシューを塗ります。
それらの防水剤で、水分の侵入を防ぎ、割れから保護するわけです。

 砥石は天然砥石と人造砥石に分かれます。
天然砥石はその名の通り、地面の下、山の中より掘り出されたものです。
天然のものだけに、極上のものは大変によい性能を持っていますが、ばらつきが多いのも確かです。
他の多くの天然資源がそうであったように、産出量は年々減っています。
今では人造砥石にほとんど取って代わられています。
天然砥石の価格は、仕上砥で2万円ほどからでしょうか。
もちろん、上質の極上品ともなれば、値のつけようがないくらいなものとなります。

 人造砥石は、研削粒を粘土質の結合剤とともに固めたもので、工業製品ですから品質は一定しています。
粒度が番数で示され、番数が大きくなると細かいものとなっていきます。
研ぐにあたって、人造砥石の揚合は、水の中につけておき充分に水を含ませてから使うことが、天然砥とは大きく異なる点です。
価格も中砥で千円程度、仕上砥で3千円程度と、天然ものにくらべて手頃なものとなっています。

 天然砥石、人造砥石の別なく、使われ方から分けられるのが、「荒砥」「中砥」「仕上砥(合わせ砥)」の三種類です。
 
 荒砥では、こぼれた刃をおろして直したり、刃の形を直したりします。
下研ぎであり、グラインダー等で代用されることもあります。
中砥は、荒砥で研いだものに刃をつけ、整えるものです。
刃こぼれを直す荒砥は、あまり使われず、通常の研ぎは中砥から始められます。
いつも気持ちよく刃物を使うためには、中砥で研ぐ程度で回復するあたりで研ぐことです。

 仕上砥は最も重要です。
刃物がよく研ぎ上がるかどうかは、すべて仕上砥で決まります。
ここでは、刃物にあった砥石を選はなければなりません。
比較的やわらかいカンナの刃などにはやわらかい砥石を、そして、カミソリのように硬い刃物にはかたい砥石を合わせます。

 砥石の種類は、人造砥の番数にしたがって、120番、180番を荒砥とします。
それぞれ天然砥石では笹口、大村と呼はれているものです。
笹口、大村ともに、かつての九州の生産地からの名ですが、九州ではすでに閉山となっています。
名のみが残り、今は紀州の産です。
次の800番、1000番は中砥となり、800番は佐伯という青砥の一種、そして市田と呼ばれる白砥です。
1000番は青砥と呼ばれます。
人造砥では3000番を超えるものが、仕上砥として用いられます。

 今日では天然砥はとても少なく、また実用の面からも人造砥でほとんどの用が足ります。
問題は研ぎ方です。下手は800番を使っても500番程度にしか研ぐことができず、
上手は2000番ほどに使いこなせるという違いがあります。
刃物は砥石で研いでいるのではなく、研ぎの最中に出てくる砥汁で研ぐのです。
刃物と砥石がこすれて出てくる砥汁は、研ぐことによって砥石の番数よりはさらに細かいものとなります。
この砥汁を上手く使ってやることが、研ぎの要となります。
 
これではNG、刃角をいつも一定に保つ
一定に保たないと、砥面が歪む
砥石とカンナ刃が密着し、このまま離れなくなる
刃物を研ぐにあたって、最も大切なことは、いかに刃の角度を一定に保っておくかということです。
刃を砥石に押しつけた特にはピタリと合っても、研ぐ段になり、前後に動かせば、手先、腕、身体全体を使っても、それを一定の角度としておくことは簡単なことではありません。
下手の場合は、引いた時と押した時の角度が変わり、結果として刃先は丸いものとなってしまいます。
これでは刃の角度は甘くなり、切れ味の悪いものとなってしまいます。
そして刃が研げるということは、砥石も同時に減っている訳ですから、砥石の形も左図のようになってきます。

 これで研ぎ続ければ、なおさら刃は丸くなり、悪循環となります。
刃にとってよいのは平らな砥面か、あるいは少々中高となったものと言われます。
しかし研げば中央が減るので、研ぎ方の工夫が必要となります。
研ぎながら、砥石の面を平らに保つようにしなけれはなりません。
同じところばかりで研がないようにし、全面を使います。
常に刃が平面であっている状態で研ぐことによって、初めて本当の研ぎと言えます。
 
 砥汁が大切です。
特に仕上砥の揚合ですが、砥面も刃も平らです。
ですから、平らな砥面と刃の間の砥汁は全体に行きわたります。
砥面と刃の間には砥汁以外のすきまはありません。
上手に砥げば、刃はそれこそ吸い付けられるように砥面にくっついてしまいます。
斜めに立ったカンナ刃から、手を離しても倒れることはありません。
カンナ刃を持ち上げれば、そのまま砥石ごと持ち上がります。

 刃物の研ぎ方にも色々なやり方、姿があります。
しゃがんで研ぐ、立って研ぐ、といった違いもあります。
原則はしゃがんで研ぐのですが、どんな研ぎ方でもよいであろうと考えます。
ただし、しゃがんで研ぐ人は立っても研げますが、立って研ぐ人がしゃがんで研ぐことはきついようです。
   
 研ぎの基本は刃角を一定とすることです。
どうしても角度が一定しない方は、定現を使っても良いでしょう。
定規を使うことの良し悪しを言うよりも、どうしたらよりよい結果が得られるかを考える方が大切だと考えます。
砥石の砥面の平滑さを常に気にして、仕事を始める前には必ず確かめます。
少しでも狂っている部分があれば印をつけていき、それを直します。
砥ぎ始めたならば、刃物の形を決めるのは砥面であり、それが定規です。
ここには気を使いすぎるはど使ってもあたり前です。

 砥石は砥石だけで仕事に使われることはありません。
常に刃物を最良の状態にしておくという裏方の役目をしています。
しかし、砥石は仕事をしないようにみえますが、刃物は砥石無しでは成り立ちません。
そればかりか、実に沢山ある刃物たちの調整を一手に引き受けているのが、この砥石です。
砥石は大きな道具のシステムのなかで、要の位置にあると言ってよいでしょう。

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