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鋸(ノコギリ)

1.鋸の手入れ−目立て

 鋸の手入れは、まず油引きです。
油壺(竹の節のところで輪切って、油を染みこませた真綿を入れたもの)の綿を、ノコギリの両面にうすく引きます。油はサラダ油でも自転車に使う油でもOK。錆止めにもなりますし、使っているときにも鋸身が熱くなりにくいので、お薦めです。ボクは親方から1日の仕事が終わったら、かならずノコギリに油を引くように教えられました。
   
 最近では使い捨てのノコギリが全盛ですから、目立てなど不要になってしまいました。しかし、ノコギリといえども刃物です。使えば切れなくなります。目立てをすることによって、切れ味を回復させましょう。
 
 ノコギリは圧倒的に横挽きをよく使います。そのため、横挽きの刃が摩滅します。
 横挽きの刃は、下のような形をしています。互い違いになった刃先に、三角形が見えると思います。この三角形の先端が丸まってくると、切れ味が落ちてきます。この三角形をヤスリですって、尖りを回復させるのですが、
横挽きの刃
いきなりヤスリをかけると刃の並びが凸凹になってしまいます。

 そこで、まず、ヤスリを鋸身に直角になるようにして、刃の先端をこすります。右下の図の左のようにヤスリをセットして、鋸身にそって軽く前後させます。こうすることによって、すべての刃先をそろえて、刃の頭を平にすることができます。
 左右の刃先が同じ長さでないと、ノコギリは曲がってしまいます。ですから、ヤスリと鋸身はかならず直角にして、左右の刃が同じ長さになるように気を付けてください。

 この作業によって、刃先は下図の中央のようになったはずです。つまり刃先の先端に、小さな三角形が水平にできています。この三角形を基準として、三角形がなくなるまでグレーにした部分をヤスリですります。そして、右のようにします。

 三角形より下まですると、ひとつだけ凹んでしまいますから、三角形の頂点を基準として、同じ調子ですってきます。全部できたら、ひっくりかえして反対側をすります。これで目立ては終了です。目立てをすれば、切れ味は回復します。このまま使ってもOKです。

 刃先をはねる目立てを何度かくり返すと、刃が短くなって歯振り(あさり)がなくなってしまいます。すると、鋸身が材料に食われて動きが悪くなります。そうなったら、刃のすり込みと、歯振り出しが必要になります。

 目立ては机の角などに、鋸身を押しつければ、鋸挟みがなくてもできます。しかし、鋸挟みがあると、目立てはずっとやりやすくなります。本職たちは鋸挟みをもっていました。

 歯のすり込みには、鋸挟みがないと作業は困難です。ノコギリを鋸挟みにくわえて、ヤスリで歯の両側をすりこんでいきます。この時には、ヤスリを下にすり下げるのではなく、横に広げるようにヤスリを使います。やってみれば判りますが、下に下げようとすると、ヤスリが食い込んで動きません。ですから、軽く広げるようにヤスリを使います。これで自然とすり込みが出来ています。

 すり込んでしまうと、歯の長さは回復されますが、歯振りがなくなっています。そこで、歯振りだしです。
歯振りだし
ノコギリを左手に持ち、右手で刃(歯)槌(はづち)を握ります。金床と呼ばれるレール(鉋の手入れでもつかった)のうえの端に、鋸を平行にして、刃先をもってきます。金床の角を、刃のグレーに着色した部分をあわせ、刃と金床を密着させます。そして、密着した上を、歯槌で軽く叩いていきます。

 刃先を曲げようとしないで、左の図のように刃を傾けて叩けば、金属が伸びて自然と刃先は曲がっていきます。このとき、左手の角度を一定に保つと、金床の角が同じ角度になり、歯振りのでかたが同じになります。コツは歯槌の重さで叩くようにし、決して力を入れないことです。すこしずつずらしながら、同じ調子でリズミカルに歯槌を叩きましょう。

 片側が終わったら、ノコギリをひっくり返して、反対側も叩きます。もちろん歯振りは両側が同じでないと、ノコギリが曲がりますから、右と左では同じ角度をたもつように注意します。
 
 歯振りがおわったら、ヤスリの背を歯振りのところにあてて、軽く引いておくと歯振りの出がそろいます。歯振りが揃っていないと、切断面がギザギザになってしまい、きれいに仕上がりません。

 目立てを3回くらいやったら、すり込みや歯振りだしが必要になるでしょうか。歯は長いほうが軽く引けますし、歯振りは多いほうが軽く引けます。しかし、歯振りが多いと、切断面が滑らかにならないので、細かい刃のノコギリは歯振りを少なくします。荒い刃のノコギリは、切断面が荒くても良いので、歯振りを多くします。
 ノコギリの歯振りは、慣れが必要です。細かい刃先を叩くのですし、しかも同じ調子で叩くのは、なれないとちょっと難しいでしょう。最初は、ブリキ板の切れ端で練習すると良いかも知れません。

 注意点をまとめると、
1.力を入れずに、ヤスリの重さですり、歯槌の重さで叩く。
2.目立ても歯振りも、左右を同じ調子で仕上げること。
 慣れてしまえば、鉋ほど難しいものではありません。新しいノコギリが手本ですから、手本になるように仕上げればいいのです。

 横挽きにらべると、縦挽きのほうは、ぐっと使用頻度が低いものです。そのため、刃が摩滅することも少なく、目立ての頻度もそれほど多くはありません。目立ての方法は、横挽きと同じですが、刃の形が違います。横挽きが3面で成り立っていましたが、縦挽きは2面しかありません。こちらは斜めになっている長いほうを、ヤスリで擦ってやれば良いでしょう。この部分を下にすり込んでいけば、しぜんと摩滅した部分がすり減っていき、刃の長さは変わらないままです。

 刃の長さは変わらなくても、歯振りがなくなっていきますので、歯振りだしはやらなければなりません。横挽きに比べると、刃が大きいので歯振りはずっと楽です。歯振りが終わったら、鋸身を水平にして横から見て、歯の出方が左右等しいか確認します。

1.鋸の手入れ−目立て
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