サーファー プロジェクト      建築用語集
No.00 問い合わせがあった No.01 敷地の状況 No.02 設計依頼と試案提示 No.03 試案の提示−その2
No.04 定例の打合せ No.05 天井と室内仕上げ No.06 仕上げ、地盤 No.07 地盤と基礎
No.08 床下の話 No.09 無垢材か集成材か No.10 建築確認申請 No.11 見積と施工者
No.12 請負契約と銀行 No.13 着工した No.14 プレカット No.15 根切り開始
No.16 コンクリート打設 No.17 基礎とヘルスコート No.18 上棟前の仕事 No.19 上棟した
No.20 屋根と筋違 No.21 中間検査 No.22 現場の年納め No.23 新年を迎えて
No.24 細かいところ−T No.25 細かいところ−U No.26 細かいところ−V No.27 細かいところ−W
No.28 階段と屋根際 No.29 建て主の参加 No.30 ほぼ完成 No.31 最後の仕事
No.32 引渡し No.33 6ヶ月点検
建築主さんのブログ<junjun>へ

大工道具・電動工具やインテリア洋品を探すなら TAKUMI Amazon
TAKUMI Amazonから、タクミ商店に使えそうな道具を集めてみました。

No.14 プレカット

 今回からは、現場報告となるはずでしたが、もう一回だけ、図面の話におつきあい下さい。
基礎工事が終わると、家の形に木組みを建て上げる上棟になる。
上棟前までの仕事は、かつてなら大工さんの下小屋で行われた。
しかし、今日ではプレカットといって、工場で加工する例が90%をこえている。
施工図−2
2階の床面をささえる梁伏図


 プレカットによって大工の腕が落ちたとかいわれるが、ボクはプレカットは良いと思う。
もともと、木拾い墨付けは棟梁の仕事であって、大工職人の仕事ではない。
それに上棟前の仕事量は、大工仕事の4分の1にすぎない。
しかも、加工機械が入る前には、上棟前の仕事と上棟後の仕事は、別の職人が行ってさえいた。
とすれば、大工の腕が落ちたのを、プレカットだけのせいにするのは難しいだろう。

 プレカットの良い点は、No.09でも言ったように、何よりも加工賃が安くなることだ。
そして、もっとも良いのは、間違いがないことである。
人間が刻む(=木材を加工すること)と、どうしても1軒の家で2〜3ヶ所の間違いがあるものだ。

 人間のやることだから、間違いはあっても仕方ないと、昔から間違いは3ヶ所までは許されていた。
柱や桁の長さを間違えるということは少ないが、ホゾ勝手の違いといった細かい間違いを、まったくゼロにするのは至難の業である。
それに対して、プレカットだとまず間違いはない。

 材料を、プレカットの機械に入れる前には、何度も打合せをする。
まず、設計者の描いた図面をもとに、プレカット屋さんが施工図を描いてくれる。
設計図と施工図は似ているが、描かれる目的がまったく違うのだ。
その施工図は、設計者とのあいだをメールで何度か往復して、お互いの意志の疎通をはかる。

 ある程度詰まったところで、米倉さん、材木屋さん、プレカット屋さん、それにボクで、施工図を細かく検討する。
今回は、ボクの事務所にあつまってもらった。
まず、図面の読み合わせをして、勘違いや考えのいきちがいを、再度調整する。
そして、部材寸法やのかけ方などをチェックする。

 最初に描いた設計図のままでも、もちろん建築できる。
しかし、ここでは建て方をみすえて、図面をあらためて検討するのだ。
通し柱(120×120)と管柱(105×105)では、寸法がちがうから壁の納まりが悪い。
寸法の違いを外側に逃がすか、室内側に逃がすか、ここで決めないと、あとで変更できなくなる。
また同じ形になるにしても、屋根材の掛け方は幾通りかあるので、それも確認する。

 図面に表れない問題もある。
最近の建て方では、重い材料を上げるのに、クレーン車をつかう。
そこでクレーン車の検討も必要である。
今回の敷地は、道路との高低差が 3.08メートルある。
5メートル幅の道路にクレーン車をおくと、対向車両が通れなくなってしまう。
1日中道路を占領するのは難しいから、どうも今回はクレーン車が使えないようだ。
そこで、クレーン車を使わなくても建て上げられるように、部材の寸法や組み方を決めなければならない。

 最初に、中央を横断する太い梁と柱を、地面においた状態で組んで、人力で起こす。
この架構を中心に、外へと継ぎ足していくような手はずにした。
下手をすると、建物が組上がらなくなってしまうこともある。
また、梁や桁を人力で上げるのは大変だから、柱を増やして、梁を小さくする。
柱と柱の間隔が2メートルあれば、180ミリの梁背が必要だが、1メートルであれば105ミリですむ。
これで建て方はずいぶんと楽になる。

 
 見積によって、すでに施工費は決まっている。
しかし、より安全になるように、より施工がしやすくなるように、何度もチェックを入れるのだ。
荷重が集中しないように、梁や柱を見なおす。
梁の幅は、すべて105ミリである。
それに対して、梁背つまり高さは、柱の間隔によって増減する。

施工図−3
屋根面直下の小屋伏図
 梁背の寸法は、構造計算によって概ね決まっている。
今回は、屋根仕上げはガルバリウム鋼板だから、軽い屋根である。

 太陽光発電のパネルを、屋根にのせることがあるかもしれない。
軽い屋根とみないで、並みの重い屋根+アルファとしておこう。
コロニアルなど軽い屋根の荷重は40Kg/u以下、重い屋根の荷重は60Kg/uである。
ガルバリウム鋼板の屋根は、10Kg/u以下の荷重しかない。
太陽光発電のパネルが、20Kg/uだから、重い屋根+アルファとみるのは、ちょっと過剰設計でもある。

 柱の間隔がひらけば、当然のことながら梁背(成)は大きくなる。
210ミリより240ミリのほうが、より丈夫である。
計算上は 210ミリとでても、余裕を見て240ミリとしておきたかったりするのだ。
過剰設計と思いながらも、安全の上には安全を見ておくことに…。

 梁背が 30ミリ大きくなると、4メートルの梁1本につき1000〜1500円ばかり高くなる。
わずかなお金で済むなら、安全側に見ておいたほうが良いだろう。
この家は、さん夫妻のために建てているが、いつか売却されることもある。
安全はさん夫妻のためだけではない。

 また、納まりの検討も必要である。
風呂廻りは、かつては防水のために、入り口を立ち上げることが多かった。
最近では、バリアーフリーを要求されるようになったので、脱衣室と浴室の床が平らになってきた。
そのため、ユニットバスがのる場所は、梁を下げておかないと納まらない。
梁を他の部分と同じ高さにすると、トイレの配管と交錯してしまう。
こうしたことは、プレカット屋さんはわからないから、打合せが必要なのだ。
そこで、この部分だけは、木製の梁ではなし、鉄骨の梁を使うことにした。

 建物のすみずみまで、こうした細かい調整をしていく。
4者での打合せが終わると、訂正した施工図をメールしてもらい確認する。
ここでまたちょっと赤を入れて、プレカットの施工図を承認する。

 承認された施工図にしたがって、機械によって加工されるのだ。
そのため、施工図で間違いを見逃すと、そのまま加工されて、現場に搬入されてしまう。
承認することによって、加工の責任は設計者にうつる。
プレカット屋さんは言われた通りに加工したのだから、間違いの責任は負わないのだ。
だから、施工図の承認は、けっこう神経をつかうものになる。

 施工図を承認したので、これで上物の手はずはすんだ。
あとは、現場で立ち上げるだけになった。
設計という作業は、物が見えないので捕らえにくいし、説明しにくいものだ。
しかし、頭で考え紙のうえに描く設計こそが、建物を決めるのである。
今回で絵空事のような設計の話からはなれて、次回からは、現場でのはなしになります。
 
 (2009.11.9)

次へ
〈タクミホームズ〉のトップへ戻る