サーファー プロジェクト      建築用語集
No.00 問い合わせがあった No.01 敷地の状況 No.02 設計依頼と試案提示 No.03 試案の提示−その2
No.04 定例の打合せ No.05 天井と室内仕上げ No.06 仕上げ、地盤 No.07 地盤と基礎
No.08 床下の話 No.09 無垢材か集成材か No.10 建築確認申請 No.11 見積と施工者
No.12 請負契約と銀行 No.13 着工した No.14 プレカット No.15 根切り開始
No.16 コンクリート打設 No.17 基礎とヘルスコート No.18 上棟前の仕事 No.19 上棟した
No.20 屋根と筋違 No.21 中間検査 No.22 現場の年納め No.23 新年を迎えて
No.24 細かいところ−T No.25 細かいところ−U No.26 細かいところ−V No.27 細かいところ−W
No.28 階段と屋根際 No.29 建て主の参加 No.30 ほぼ完成 No.31 最後の仕事
No.32 引渡し No.33 6ヶ月点検
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No.09 無垢材か集成材か

 木造住宅では、なんといっても<木>の話になる。
ところで、1 軒の家で木材に使われる金額が、どのくらいなのかご存じだろうか。
総額のおおむね10パーセントが木材に使われ、そのうちとかといった構造材は6〜7パーセントくらいである。
残りは羽柄材(はがらざい)と呼ぶ、構造とは関係のない垂木間柱にまわるのである。

集成材の梁 無垢の梁
左から米松と杉の集成材、桧だけの集成材、桧の無垢材

 それに木材の加工費が、坪あたり約¥7000〜¥8000かかる。
最近では、プレカットといって、構造材は工場で加工される。
プレカット部分を大工さんにやらせると、坪あたり1人工かかる。
1人工とは、1人前の職人が1日働いたときの作業量をいい、日当に相当する。
現在、大工の日当は約20、000円だから、プレカットのほうがはるかに安い。

 総額1200万円の<サーファープロジェクト>では、木材費は93万円である。
間仕切りが少ないので、木材の使用量が少ないことが判るだろう。
そして、加工費が20万円かかっている。
ここまでが家の骨組みができる金額である。
(これとは別に、現場での大工手間がかかることは後述する)

 さて、無垢の木材か、集成材が良いのだろうか。
多くの人がもつ木のイメージは、圧倒的に無垢材であろう。
しかし、よく考えて欲しい。
無垢の木材は均質ではなく、陽疾(アテ)アテといった弱い部分ももっている。
そのため、梁などに使う横架材には必要な断面よりも、一回り太い部材を使わなければならない。

 それに対して、集成材は節などを除いてあるので、小さな部材で同じ強度がでる。
そのうえ、もっと大きな問題は、大きな木材が少なくなっているのだ。
国内には、構造材として使える木材はない、といっても過言ではない。
右上の写真は、梁として普通に使われている米松、つまりアメリカ産の松材である。

 国産材を使って欲しいといわれるが、大断面が必要な太い梁材は国産では入手不可能である。
少なくとも、通常の金額をだしたのでは、国産の梁材は手に入らないのだ。

 ボクが現場にいた頃から、すでに梁材は外材だけになっており、わずかに太鼓状にした丸太材だけが国産だった。
太鼓材は加工がやっかいで、結局、高いものにつく。
そのため、いまではほとんど使われていない。
ということで、構造材は欲しくても国産材はなく、外材が主流というのが現実である。
もし、国産材でということになれば、集成材しかないのだ。

 集成材は厚さ20ミリくらいの板材を、何枚か貼りあわせたものである。
そのため、米松と杉を重ね合わせて貼るとか、違った材種を混合できる。
混合することによって、強度を高めることもできる。
国産材を使うためにも、集成材化はさけては通れないものになっている。

 国産材が使われるのは、柱とか土台といった細い材料である。
柱として使われるのが、右下の正角材の写真である。
3本ならんでいるうち、左の2本は集成材なので背割りがない。
一番右の柱は、木口の中央に真ん中まで切り込みが入っていることが判るだろうか。
無垢の木は製材されても動くので、背割りを入れておかないと、表面にヒビが入ってくる。
それを避けるために、背割りを入れるのだ。

 無垢の木材は動く。
この性質が、現代的ではないのだ。

 
 乾燥が不充分の無垢の木をつかうと、建ててから屋根裏から木の割れる音がする。
無垢材でも、柱は背割りが入っているので、さすがに割れることはない。
しかし、動くことは柱も同じである。
柱というおおもとが動くと、その上についている壁も動く。

集成材の構造材が組上がった様子

 とくに真壁造りにすると、柱と壁の取りあい部分(=散り際)が、やがて空いてくるのだ。
昔の人は、散り際が空くと、ふたたび壁際を塗り直した。
しかし、今では散り際が空けば、クレームの対象である。
建築主も住宅にたいして、車のような工業製品並みの品質を求める。
散り際が空くと、欠陥住宅となってしまう。
そうした風潮が、施工者たちを慎重にさせている。
クレームをなくすために、集成材を使うようになってきたのだ。

 それでは無垢材と集成材では、どちらが高いのだろうか。
意外だろうが、集成材のほうが10パーセントくらい高いのだ。
今回の計画を、施工者に相談したとき、施工者はまず最初に集成材を使わせて欲しいといってきた。
超ローコストの<サーファープロジェクト>である。
無垢材はイメージが良い。
安い無垢材を使いたいと言うだろうと思っていたボクは、ちょっと驚いた。

 集成材の普及は、建築工法も変えている。
大壁造りにする場合、かつては柱のうえに胴貫(縁)とよばれる薄い材料を打ち付けた。
それは柱の暴れを表にださない仕掛けだった。
しかし、集成材になって、柱が動かなくなったので、胴貫が省略されるようになった。
胴貫を省略しても、壁の平面性は保たれるようになったのだ。

 集成材に対しては、いまでもアレルギーがある。
集成材を見ると、多くの人が 「な〜んだ」 という顔をする。
たしかに、きれいな顔をした集成材は、表面だけをとりつくったものだ。
しかし、節なしの無垢材だって、一種の養殖材なのだ。

 どんな木だって枝があり節がある。
ほっておいたら、節だらけの木になるものを、人間が節がないように仕立てているのだ。
枝を伸ばしたい木にさからって、人間が枝を払ってしまうから、節のない木ができるのだ。
節のない木とは、じつは不自然な産物なのだ。

 しかも、現代住宅の耐震力は、構造用合板でもっている。
構造用合板とは、薄い薄い板を貼りあわせたものだ。
耐震力が構造用合板に頼っているかぎり、集成材を使うべきではないだろうか。

 和室がすたれ、畳の生活から、日本人が離れている昨今、柱にだけ無垢材を求めるのは、何だか座りの悪いものを感じる。
たしかに、接着剤の信頼性が問題になる。
接着力が何年もつのか、疑問に思う。
また、水をかぶったときに、接着剤と木材は同じように伸縮するかも、不安である。

 しかし、自然の気候に反して、夏は涼しく、冬は暖かくすごしたい。
こうした不自然さを好む人間の願望は、無垢の木にとっては、なかなか受け入れられるものではない。
そのうえ、和室に座って、木材の木理を愛でることなど、今のボクたちには無縁になってきた。
また、無垢の木材を、磨き込むなどといった、手間のかかる手入れを忘れてしまった。
そう考えると、無垢材への願望は、意味のないノスタルジーではないだろうか、とも思えてくる。
 
 (2009.09.27)

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